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60万アクセスまでの経過

2009年12月に始めた本blog。2011年7月ごろに10万アクセスを達成し、2011年12月13日には15万アクセスを達成。
その後、私も更新しておらず、アクセスは少し減りましたが、3月1日には18万アクセス。2012/4/18に20万アクセス、2012/8/21に25万アクセス、2013/1/18に30万アクセス、2013/12/17に40万アクセスを達成しました。しばらく見ていなかったら、2015/5/1に50万2584アクセスになっていました。またまた、しばらく更新しないうちに、2017/6/11に60万7197アクセスになっていました。2018/7/7 .. おお七夕 .. には63万0656アクセスになっていました。久しぶりに更新しました。

2013年5月28日火曜日

アベノミクスとは一体何なのか?

アベノミクスという「異次元緩和???」で、日本のデフレを脱却し、2%のインフレに持って行くとしている。果たして、その実体は何なのか考えてみた。

wiki: アベノミクス http://bit.ly/11sIO9o

アベノミクス 3本の矢: http://www.toha-search.com/keizai/abenomics.htm から引用すると。

1. 大胆な金融政策
バブル崩壊以降の20年間における不況の最大要因をデフレと捉え、デフレ脱却を目指すべくインフレターゲットの導入を決定。そのために、これまで独立性が重視されてきた日銀に対して、日銀法の改正も視野に入れた上で2%の物価目標を掲げるよう働きかけ、その目標が達成されるまでは無制限の量的緩和策をとることを決定しました。

2. 機動的な財政政策
政府は2013年1月15日、過去2番目の規模となる13兆1千億円の補正予算案を閣議決定しました。内訳は、東日本大震災の復興費を含む”復興・防災対策”に3兆8千億円、通学路の安全対策など”暮らしの安全・地域活性化”に3兆1千億円、さらに再生医療の実用化支援など”成長による富の創出”に3兆1千億円となっています。

3. 民間投資を喚起する成長戦略
産業競争力会議において7つのテーマ別会合を開き、2013年6月をめどに具体案をまとめるとした。7つのテーマは以下の通り (1.産業の新陳代謝の促進 2.人材力強化・雇用制度改革 3.立地競争力の強化 4.クリーン・経済的なエネルギー需給実現 5.健康長寿社会の実現 6.農業輸出拡大・競争力強化 7.科学技術イノベーション・ITの強化)

異次元緩和??)
http://www.j-cast.com/2013/05/12174641.html?p=all には、
金融政策を遂行するための金融市場の操作目標を、前総裁時代の「金利」から、日銀が世の中に直接供給する通貨の量を示す「マネタリーベース」に変更することを決定。
http://toyokeizai.net/articles/-/13881 にも解説がある。

マネタリーベースとは?)
市場に流通する現金を増やすことで、インフレ傾向に持ち込もうとするものである。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF0400M_U3A400C1EA2000/ にあるように、市場に出回っている現金の量であり、これは、日銀が市場(実際には、一般銀行が持っている国債などの株券)を買い上げ(日銀当座預金の増加)て、市場に流通する通貨の量を増やすことに当たる。

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE94100220130502 にあるように、実際、2013年の4月から5月で、この通貨流通量は10兆円近くも増えて、155兆2803億円にもなっている。

実際には、http://s.nikkei.com/11sC8rO にあるように、長期国債の金利を引き下げ、長期金利の引き下げも狙っている。

実質金利=インフレ率 - 金利 がマイナスになれば(つまり千円借りて1年後に1,100円返す必要があるが、返すときには1000円のモノが1200円になっているので、借りて使った方が得)となれば、借りた方が得になり、投資や消費が活性化する。

だが、http://s.nikkei.com/11sC8rO のように、インフレになれば、金利上昇の圧力が働くので、そうはいかないという批判もある。

銀行券を増やせば、デフレから脱却し円安になるのか。)
流通通貨量が増えれば、通貨の価値が下がってインフレにはなる。

が、それはハイパーインフレ(後述)を招きかねない。

結局のところ、景気を良くするインフレというのは、1) 生産力が十分あるうえで、2) モノの需要が 3) モノの供給を上回るときに生まれるわけであって、

通貨の供給量が増えても、i) 賃金が上がり、購買力が増え ii) 生産効率が上がり製造力も増えないと、なんら景気は良くならず、インフレをもたらすだけになる。
不況下にも関わらず物価が上昇を続けるのは、スタフグレーション http://bit.ly/QfDrEo と呼ぶべきであろう。

ハイパーインフレ)
http://bit.ly/11sDCSK にあるように、なかでもジンバブエのインフレは有名であり、3ヶ月で10桁もモノの値段があがっている。1円だったものが3ヶ月で100億円になるわけである。

日銀法)
「国債を一般銀行から日銀が買い取って通貨の流通量を増やすなどという紛らわしいことをしないで、日銀が潰れそうな企業の株を買い上げればよいだろう。」とも思ったが、
日銀法: http://bit.ly/11sNEDo によれば、それはできないらしい。

もっとも、調子の悪い企業に運用資金を供給するのは、資本主義の原則には合わず、実質経済を沈滞させるだけだと思う。

だが、供給先を考えずに公共投資やらバラマキをするのは、結果的には同じ事になる。
結果的には同じ事なので、無駄な税金投入をしないように、国民が監視を強める必要がある。

増税)
http://matome.naver.jp/odai/2133976910545533001 
によると、「現在5%の消費税率は、2014年4月に8%、2015年10月には10%へと、2段階で引き上げられることになる。」らしい。
増税すれば、消費が下向きになるのに、今、消費税を上げるのは意味不明に思う。
それも、赤字国債を償還するためならともかく、アベノミクスでは、通貨流通量を増やすといっているので、国債の流通量は増える一方の可能性がある。

ここからは、若干憶測が入る)
まず、市場に流通する貨幣を増やすには、政府が国債をばらまくことになる。

国債の対GDP比率 http://ecodb.net/ranking/imf_ggxwdg_ngdp.html を以下から引用するが、日本がダントツ世界トップ。

ギリシャよりも、デフォルト危機でドルが暴落した米国よりも圧倒的に政府の債務が多い。

政治家や経済通の人たちは、国債だけではなく、その他の金融資産をいれた、NetDept で換算すべきだという意見もある。これであれば、若干負債額は減るが、流動性がさらに低い金融資産をいれて、負債が減ったとする意味については不明。

NetDebt) 一応、http://libertarian.seesaa.net/article/127375546.html から引用すると、以下のようになる。NetDebtなら、以下の下のグラフのように世界最悪をタリアにゆずり渡すことになるが、私は、イタリアの債務額は減少傾向なのに、日本の債務額は急増していることに着目したい。(少子化する自分達の子孫に、返せないほどの負債を残してのうのうとしているのは、どういう大人たちなのだろう。。)



これでも日本の信頼が落ちないのは、国債を日本人(主に日本の銀行)が保有しているため。。

http://on-linetrpgsite.sakura.ne.jp/cat5/post_6.html の図を下に引用するが、膨大な量の国債 の66%が、一般銀行などの日本国内の金融機関によって保有されている。


また、http://kin-toushi.seesaa.net/article/306064477.html によれば、
日本国債の海外勢保有比率:8.7%(額にして82兆円)
  ・2012年6月末時点期資金循環統計から
ギリシャ国債の海外勢保有比率:75%
・ギリシャショック(2011年)が起こる大分前、2009年12月末時点。
スペイン:39%
イタリア:44%
ドイツ:40%
だが、昨今は海外保有率が高まってきている模様(以下)。
http://jp.reuters.com/article/idJPTYE88J01N20120920 

http://bit.ly/11sQwjO では、大前研一は、海外保有率の増加を危惧している。

国内保有の理由としては、デフレで消費が冷え込んでおり、個人資産が銀行に貯蓄され、バブル崩壊で産業投資のリスクを採れなくなった銀行は資金を割と信用のある日本の国債購入に充てているため、大量の国債を日本が保有できている。

だが、本来は投資に回るべき金が、国債を通じ、国家支出となっていくのだが、これが、有効な投資に使われるのかは、非常に疑わしい。例えば以下。

2012年1月3日火曜日: 日本は米国の属国なのか? - 防衛費の使い方の不可解


急増した国債残高)
国債の残高は1992年頃から急速に増えている(これを http://ecodb.net/country/JP/imf_ggxwd.html から引用する)。2つ前のグラフのほうが、他国との比較もあり、X軸が詰まっているので、国債の急速な増加が分かりやすいかもしれない。



バブル崩壊の景気後退を、自民公明の連立政権が、公共事業バラマキでなんとかしようとしたためだと思う。http://bit.ly/16PJ0BH にあるように、1993年から2009年まで自公民の連立政権であり、このときに、赤字国債が急増している。

そして、一旦、民主党政権が、仕分けとかで歳出抑制をやったが、また、自公民にもどり、アベノミクスという名の、バラマキを再開しようとしているのではなかろうか。。

まとめ)
参議院選で、自民党に信託を与えるまえに、よく考えた方が良い。ダメなら、今度こそ信用するに足る正当を自分達の手でつくる必要があろう。。

政府が日銀を脅して日本銀行券を刷りまくると、止まらないインフレになることが心配される。やるべきコトは、通貨流通量を増やすのでは無くて、以下のことであるはずではなかろうか。。
  1. 国民、特に高齢者層が日本の将来に心配をして、ためこんでいる私財を放出させ、若者に還元させる
  2. 古くて競争力のない産業が自助努力で再生しないのならば、そこへの投資はムダであり、むしろ規制を緩和したり、若くて強い産業を支援して、産業人口を移行させていく
  3. バブル以降貸し渋りをしている銀行の膨大な預金を、若くて活気のある産業に配分する
  4. 欧州はギリシャ・スペインなどの通貨危機に苦しみ、米国も苦しんでいる。中国の経済も失速気味である。先進諸国の経済は、1980年台までのように活気をもっていない。先進国の繁栄が発展途上国や資源保有国の富を吸い取って成立してきたのだが、その富の略奪が、発展途上国の経済発展で成立しなくなってきているからではなかろうかと思う。これは、下に示すオイルショックが一つの例だと思う。

    http://bit.ly/11sHYcJ 「ついに“アベノリスク”との不安も…株価急落の原因は中国の景気悪化が原因か?」という記事もある。
オイルショック)
1970年代のオイルショック http://bit.ly/IlFIZy では、アラブの産油国の連携で、石油の価格が一気に跳ね上がっている。



円安要因)
http://www.77bank.co.jp/kawase/usd_chart.html のように昨今急速に円安が進んでいる。グラフを引用する。

円安の要因は、アベノミクスに関連する期待感だけではない。
原発が止まって天然ガスの輸入が増え、貿易赤字も増えつづけている。http://bit.ly/16PJlo9 によると。
財務省が2013/5/22日発表した4月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は8799億円の赤字だった。貿易赤字は10カ月連続で、赤字幅は1979年の統計開始以来、4月としては過去最大。輸出額は、2カ月連続でプラスとなった。
 円安の影響を受けて、米国向けの自動車などが増加したため、輸出額は前年同月比3.8%増の5兆7774億円となり、2カ月連続で増加した。一方、輸入額は火力発電に用いる液化天然ガス(LNG)の輸入額が膨らんだことなどから、同9.4%増の6兆6573億円となり、6カ月連続で増えた。
国際経常収支が為替に影響する)
http://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201208b.pdf  に解説がある。ここから図表5を引用する。為替に影響するのは、貿易収支ではなく、所得収支も足し込んだ、貿易経常収支である。
 http://www.asahi.com/business/intro/TKY201211080851.html のグラフのほうが経常収支の変遷が分かりやすいのでこれも引用する。

財務省サイトにあるグラフは2011年度までだが、http://bit.ly/11sKuQe (以下引用)である。

所得収支は円安で伸びる)
すぐには効果がでないが、円安になれば、所得収支は増える。このおかげで、円安になって、燃料輸入の費用が増えても、経常収支は相殺される。

所得収支とは、日本の企業が、海外に工場移転したりして、外貨であがる収益である。
超円高になり、為替差損を吸収しようと企業が海外進出したおかげで、企業は外貨で収入を得て、優良な輸出企業では収益を円建てと外貨建てでバランスさせており、このおかげで、円が下がると外貨での儲けは同じでも、そこから換金できる円の額が増えるので、所得収支は増えるのである。。

とはいえ、米国の製造業が工場を海外に移し、失業者が増えたように、工場の海外移転は、産業の空洞化を招き技術力が低下すると同時に、労働人口を吸収できないため、失業を増やす恐れがある。

円安で製造業が日本に戻ってくるのはある程度歓迎すべき事であり、地球温暖化には悪いかもしれないが、燃料の輸入が増えたのは、いまのところは歓迎すべきことなのかも知れない。

おまけ)
wiki: 日本銀行 http://bit.ly/11sO3G2 によると、日銀は資本金1億円で上場しているらしい。総資産は113兆円もあるのに、この資本金はあまりに少なすぎる。
結局は、国有銀行ということであろう。

2013年5月21日火曜日

中間試験試験後に起きたこと - CS142から

中間テスト: Midterm)
CS142 (Web Programming) の授業のMid Termのテストが先週水曜(5/15) の授業終了後にTA(Teaching Assstant) から返却された。
TAは6人ぐらいいて、教授が黒板に学生の苗字のアルファベットの範囲で、どのTAに行けばよいかを書いていた。
この授業CS142は、学部生用の授業なので、TAは修士の学生らしい。

私は、Audit(聴講者) なので試験は受けなかったが、ちらっとみると、Letter 版(A4ぐらいのサイズ)の用紙に4-5枚くらいあって、1ページに3設問くらい。
設問の下に答えをかいて、提出し、その答えに赤で添削がされていた。こういう採点もTAが行う。そもそも教授とTAは、毎週金曜の午後に授業のための会議をしている。

明らかに採点ミスがあるときは、反論を受け付けるので教授室にくるようにとのこと、それ以外は受け付けないとのこと。

後日、一問は全員正答とすることになった。学生が、出題のミスを指摘して、正答が存在しないことになったためらしい。学生も賢いのである。

CS142)

CS142については以下に書いた。

2013年5月6日月曜日: Stanford大学の授業

Withdrawした学生たち)
その直後の金曜(5/17) は、400人教室満員だった学生が1/2〜1/3の人数まで減って教室がガラガラになった。次の月曜(5/20) の授業も同じくらいだったので、2/3近くの学生がドロップしたのだろう。。全米トップ水準(ノーベル賞学者が50人近くいる) の名門Stanford大の学生なのに。。。

GPA)
http://ja.wikipedia.org/wiki/GPA にあるように、最高成績のAが4.0 A-が3.8、Bが3という数値を与えて平均する。大学によっては、A+があって、4.2となる学校もある。

大学院に行ったり、良い企業に行くにはGPAは3.8は必要。すなわち、ほぼAll Aが必要になる。そのため、米国の大学では、同時に3教科をとって、宿題や予習復習に十分時間を掛けるのが普通。

CS142では)
中間テスト(Mid term) では、
平均点: 56点  標準偏差: 17点(できる学生と、できない人の開きがかなり大きいと言うこと。。以下)
それで、Prof. Johnは、平均点を取ればB+を与えるといっている。

さらには、
http://www.stanford.edu/~ouster/cgi-bin/cs142-spring13/info.php に採点基準があるが、以下のように、中間試験(Midterm)は100点満点中15点に過ぎない。
それでも、中間試験をみて、2/3も学生がドロップするのは学生達が、いかにGPAを気にしているかということを示している。


正規分布)
http://www.stat.go.jp/howto/lecture4/02.htm から抜粋すると、分布が正規分布の場合には、平均+-σ の外になる確率が32%。上側と下側はそれぞれ16%がいることになる。つまり、56+17=73点を超えると上位16%に入るということ。
標準偏差が大きいので、高得点の人、低得点の人が沢山存在し、成績がばらけていることがわかる。次節に書いたように、GPAを上げるための再トライの学生も多いのだろう。



Withdrawすると)
Stanford大の成績評価の規定 http://stanford.io/14prUH9 をみると、授業途中でドロップすると、WithdrawのW評価になり、GPA(平均成績)には参入されない。ただし、こちらの大学を出た人によると、あまり沢山Wがあると、授業完遂率が悪いと就職に差し障る。Stanfordでも他大学でもそうだが、同じ授業を再度履修して履修収量すればWが消えるので、次のチャンスにかけるのだろう。学生達のスケジュールがギチギチなのは、そうやって再トライアルをやりつつでているからなのかもしれない。

通常は、同時受講3科目が限界だと言われている。1科目で週3 hours (時間: 2,3回に分解もあるが)なので、週合計9 hours。一科目3単位として、最高22単位まで同時受講可能なので、7科目とれるはずなのに、3科目しかとらないのは、課題の多さと、GPAを考えて予習復習と試験対策を考えると、3科目が限界なのであろう。

日本の大学に対して)
入試に通れば絶対に卒業できて、大学の成績はあまり気にしない日本だが、高校までの成績(特に数学など理系科目)が良いだけに、大変もったいない。。

2013年5月6日月曜日

Thought for the Weekend - Stanford大CS142より

Thoughts for the Weekend. -- 週末に考えてみよう。。

は、Prof. John Ousterhoutが、週三回あるCS142の授業のうち、金曜の授業の最後に出す1枚のスライドである。これが、なかなか深い。毎回、結構長い解説がついていて、終わると学生から大きな拍手がある。

よくよく考えてみると、どの内容も、日本社会が今悩んでいる問題について述べている。
とりあえず今のところ最後の内容である5/3のものは、まさに東電事故のあとの日本人の振る舞いにもあてはまる。

世界中どこでも課題は一緒。どう対処するかを、いつも考え、それを教育に盛り込んでいるから、米国は強いのかな...と思う。是非最後までお読みいただきたい。

こんな内容でも、Prof. Johnは思いつきでは授業をしていない。レター用紙4-5枚に書いてきたメモを読みながら、間違えないように解説している。

学生に知識だけを詰め込んだり、レジャーランドと化している大学と、こうやって社会での生き残り方、変化への対応法を教えている大学では、若者のその後の成長が変わってくる。教育こそ一番大事な投資である。大学に特許数を競わせたり、大学の先生が政府の委員会で時間を奪われていたら、世界に通用する人材は育たない。。

2013年2月7日木曜日: 大学の本分は教育ではないのか。。


CS142全体)
CS142の授業全体については、以下に書いた。知識だけではなく、技術の進化・長短を教えることで、物事の本質を理解する能力を教えようとしている。

2013年5月6日月曜日: Stanford大学の授業



それぞれのThe thought for the weekend)
   ==> の記号の後ろに私の所感をつけた。
4/05(金)  
 A Little Bit of Slope Makes Up For a Lot of Y-intercept.
 約「少しのでも傾き(右上がり)があれば)、Y軸の値は上がっていく。」

「毎週金曜の最後に一つスライドを示す。週末に考えようってね。」
「技術的ではないけれど、もっと重要なことなんだ。。」から始まる。
「キャリアのために、フィロソフィー(哲学)が必要なんだ。そして、パーソナリティを、スパイスにするんだよ。(笑い)。」

4/05 (金)
「学んでいけば、そのうち成長しない人を追い越すということ。」

「この授業は、いろいろな人が出ているから、既にweb applicationのプログラムを書いた人もいるだろう。でも、あいつはよく知っているな。なんて心配することはない、ちゃんと授業にでていれば、すぐに追いつき追い越すから心配はいらないんだよ。。」
 と、まさに、いろいろな経歴の人がいる授業の最初にピッタリの内容。

さらに、
(Prof. John)「私は、ベンチャーをいくつか興したけれど、人を雇うときには、知識よりも学習能力を主に評価したよ。ベンチャーなんて、やっていて、誰も経験したことがないことが山ほど出てくるから、知識よりも、学べる能力のほうが重要だと考えるんだ。」

「歳を取って、同じ事を何度も繰り返していると、この学習の斜面がなくなってフラットになってしまうんだ。。」
「傾斜が緩くても悪くない、少しずつでも改善していくからね。。」

 ==> 日本で停滞する企業には、学習カーブの傾きがほとんど無くなった、(気持)年寄りばかりなのではなかろうか。。言い訳をしていて、チャレンジしなければ、何も学べない。

4/12(金)
   Coherent Systems are Unstable.

この一文だけ。訳すと、「規律がとれた(同期した)システムは不安定である。」

「レーザは、コヒーレントである。光の波が同じようにそろっている。
 経済システムも効率を追求すれば、制御を集中化して規律正しく動かす。」
「みんなが、使っているPCのwindowsもコヒーレントだ。しかし、それはエラーに弱い。中央がやられると、動かなくなる。」
「経済も、不況になるとまわらなくなる。」

「Coherent Systemを作るのは、効率が良いから。だが、外乱に弱くなる」

「そう言う点で、(米国)政府の作る決まりは、極めて非効率なんだが、安定だということだね。。」

「この命題には答えはないよ。。」

==> 確かに、日本が、高度成長を成しとげ、所定の経済構造の中で効率最高になる会社システムを作り上げた。だれでも管理でき失敗のない。。でも、経済構造が変わると、そして、現在のようにグローバル化して変わり続けることが当然になると、これが逆に足かせになっているように思う。誰が悪いわけでもない、効率を上げすぎたシステムに自分達が脅かされているのかもしれない
これは、http://president.jp/articles/-/9265?page=3 
 「大組織のスピードを上げる」米軍式4つのメソッド
でも述べられている。 
この記事に関して、まとめると、大きな組織のスピードをあげるために、米軍の9.11以降の変革が参考になるという記事。日本の企業では、軍隊式...と命令直下を主張する幹部もいるが、すでに、軍隊ですら昔と変わっている。最新の方式は、命令を出すものではなく、関係を確立し自律して動かすことで、予想外の状況(テロ)に対応するものである。
異論を推奨するも、日本の企業ではなかなか難しく、すぐにYesManの登用となる。それは、Prof. Johnも力説するように、変化に弱い組織を作り出す。 
記事にある変革のポイントは以下の5つ。
1.関係を構築する
2.共通の目的を確立する
3.共通の意識を生み出す
4.異論を奨励する
5. 不都合になるぎりぎりまで権限を分散せよ 
組織をフラットにしても、権限を分散しなければ、少ない幹部に判断案件が集中し、組織のスピードは返って落ちるばかりか、幹部がいないと何も動けない組織になってしまう。 
この米軍の組織改革の話は
『小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密-ピーター・シムズ』http://www.amazon.co.jp/dp/4822248968  にも詳しく紹介されているとのこと。
アメリカ陸軍の基本教義FM-05「作戦のプロセス」はたいへん面白い。創造的で俊敏な組織となるためには「デザイン思考」が重要であるとして1章をあてているとのこと。デザインとは「複雑かつ把握困難な様相を呈する問題を解決に導くために批判的かつ創造的な思考を適用してそれらの問題を理解し、視覚化し、描写するための方法論である 」とされる。簡単にいえば流動的な状況には固定的な既成の対処法を当てはめてはならないということ。
米国では、いろいろなところで主張されているようである。

4/19(金)
   You Don't Need to Lose Arguments

訳すと、議論に負ける必要はないんだよ。。
授業が終わったあとで、一応確認した。Johnは「これは、言葉の定義で遊んだんだよ」といっていた。つまり、Johnは通常とは違う意味でLoseを再定義している。

「間違っていることを、主張しつづけることが悪いんだ。」
「間違ったら、認めることだ。」- それをしないのが本当のLoseなんだよ。。

「子供は、気にしないから、親が止めてくれる。たとえば、道路にボールが出たときに、道に飛び出さないように親は止める。」

「(ところが、君たちは大人だから)だれも、君たちが正しいことをするように指導なんかしない。」

「自分が考えるようにやるしかないんだ。。」

「だから、自分で自分の行動を修正できるようになるしかないんだ。」

「誰でも間違える。だから、ダメージが小さいうちに直すしかないんだよ。」

「心から信じていても、常に考えて、証拠を集めていくしかない。」

「どんなに信じていても、赤信号がともったら、間違っているかも知れないと、考えはじめるときなんだよ。。」

「複数の人から指摘されたら、間違っているんだろうと思うべきだろう。」

「プログラムを作っていて、バグがいくつもでてきたなら、やり方がおかしいと思うだろう。」

「赤信号を見付けたら、なるべく早く認識することが大事なんだ。」

「トイレから出てきたら、あいつは考えが全く変わっていたんだというのは、間違っていないんだ。」

It's not late to fix it.    Self correct quickly!

==> 説明するまでもないことです。権威とかプライドとか、そんなものにこだわりだすと、なかなか実行できなくなります。つまり、若者のほうが偉いということでしょう。。

4/26(金)
   Scar Tissue Makes Relationship Wear Out.

訳すと、「傷の再生組織は、関係をほつれさせていく。」

「人間のつきあいなんて、25年も続くことは希で、せいぜい2〜5年。ビジネスだともっとはやくほつれる。どうして、そうなるのだろうかな。。」

「典型的なのは、小さな食い違いの積み重ねなんだ。。」

「人間は、ケガをすると、傷口にScar tissueという強くない組織ができる。治ったようにみえても、元通りにはなっていない。」

「一つ一つの傷は、命の危険にはならないんだが、みんな、このscar tissueを増やしていくんだ。。そして、あるときどうしても続かなくなる。」

「例を挙げると、自宅のキッチンのリフォームしてくれたプロのリフォーム屋がいて、仕事のできが良いので、長いこと懇意にしていたんだ。だが、キッチンのシンクのところの仕事をほんの少ししくじって、小さな隙間があって、そこからホコリがはいってくるんだ。。そのホコリを毎日見ていて、もう頼まないことにしたんだ。。」

解決策は、「とにかく、傷を作らない、怒(=upset)らないことだ。」「常に、妥協が必要なんだ。」

とりわけ盛大な拍手!!!

==> 私の指導教官でもあるProf. Johnは、学生にとても厳しく注文をだして、時に研究室の学生に対して「私は、学生には嫌われているんだろう」なんてつぶやく。そのProf. Johnの口からでるとは思えないような言葉。。

5/03(金)
   Fear is More Dangerous Than Evil.

訳すと、「恐れは、邪悪よりも危険である。」

「911テロのとき、テロリストの次の攻撃を恐れるあまり米国内には疑心暗鬼が飛び交って、人々の心がすさんだ。」

「人々は、悪い出来事から学習するのではなく、そのことを拒否しようとする」

「恐れを克服しないとならないんだが、邪悪と恐れはベストフレンドなんだ。。」

「動物は、恐れることがあるおかげで、リスクから逃れて命を守ることができる。」

「でも、人間が恐れを感じると、悪い結果をもたらす。」

「恐れの対局にあるのが、自信(Confidence)であり、力(Power)である」

「子供には、失敗を恐れるのではなく、立ち向かうスキルを教えないとならない。だから、子供が物事をうまくやってしまうのは実はまずいんだ。失敗して、対応を学べないからね。。」

「気分がHighになるとアドレナリンが出るという、そういうときは、恐れには支配されていないということだろう。。」

---

これは、 Will Smith と実子 Jaden Smithが出演する近々公開の映画 The Earth http://bit.ly/10bPvpR のポスターにも似たことが書かれている。「Danger Is Real. Fear Is A Choice」== 危険は実在であり、恐れは選択である。

 米国人は、fearというのが邪悪であることを、良く知っているのだろう。

5/10(金)
   Simplicity

訳すと、「シンプルさ」 - これはProf. Johnが、RAMCloud ( http://stanford.io/12Y8hWt )の研究開発でいつも主張している点でもある。

「人々は、マッチョ(つまり、完全対応)であることを主張するが、先が読めないことが良い」

「Simpleなほうがよい」「システムをつくるのは大変である」

「しかし、世の中では、複雑なシステムのほうが儲かる」

「ビジネススクールでは、基本複雑化しようとする。携帯の料金プランとか、クレジットカード、銀行のオンラインシステム、航空券の値段システム(時期と、ランク毎の値段)。。。。」「わからなくなる。。」

「シンプルさは保守容易性をもたらす。物理的にシンプルにすることを妨げる要因はない。」

「身動きが出来なくなる(Freeze)する前に考えよう!」

5/17(金)
   Is the Truth Your Enemy
   or Is the Truth Your Friends?


訳すと、「真実は敵か味方か?」

「調べて真実を見つけ出せば、見方になるはずだろう??」

「では、人々は、なぜ真実を見つけないで、言い訳をしたり否定したりするのか?」

「選挙では、否定したり、事実と反する情報を流したりする」

「本当のことを知るのは素晴らしいことだし、嘘をつくのは危険なことである」

「でも実際には、事実が何であるかに関わらず、先に進まなければならないことが多い」

「産業界では、自信が持てないが先に進まないとならないことが多い」

「地球温暖化も、海が沸騰すれば。「ああ、事実だった!!」とわかるだろう。。
 早めに、手を打とうとすれば、調べたりと、いろいろコストがかかる。」

5/24(金)
   The Most Important Component of Evolution is Death

訳すと、「改革のために最も重要なものは死か?」

「新たな組織を作る方が簡単なのか、既存の組織を変える方が簡単なのか?」

「一度できてしまうと、変えるのは大変」

「生物の場合には、個々は死ぬが、種を保存するために生殖が存在する」

「会社や会社文化を変えるのは大変である。」

「コンピュータの世界は、汎用機 → ミニコンピュータ → パソコン」と変わってきたが、普通はこういう世代交代は難しい。

「輪廻転生という意味では、Sun Micro SystemsがOracleに買収されたりしており、シリコンバレーでは変わることが常である。」 (補注:シリコンバレーでは、Silicon Graphicsの建物がGoogleの本社であり、Sunの本社跡にFacebookが入り、HPの跡地にApple Computerが本社を建てる)

「Googleの設備投資(CAPEX?)はサチッテいるし、AppleやMicrosoftの収益も平坦になりつつある。そろそろ、次の会社が台頭してくるということだろう。」

「ベンチャーキャピタルは、正しいことは、会社が死ぬことであるという。起業してしばらくたつと、起業者のハングリー精神がなくなるからであろう。」

「ソフトウェアは、とても変更することが簡単なので死ぬのではなくて、変更して更新して、生きながらえやすい。そして、複雑で、分かりにくいものになっていく。
 これは、どこかで止めないとならない。が、その手段は持っていない。」

「政府は、絶対に死なない。変われなくて、複雑怪奇になっていく。一から作り直せば、画期的なものになるかもしれないが、暴力的ことになるだろう。。」

(補注: これは、4/12のコメント:http://bit.ly/15cC2D5 「Coherent Systems are Unstable」と、若干矛盾している。統制の取れたシステムは脆弱であるので、4/12の解説では、統制は取れていない方がよいかもしれず、政府は最も統制が取れていない(ので良いのだ)。といっている。)

5/31(金)
   Do Your Disasters Make You Stronger or Weaker?

訳すと、「身に起きた惨状は、自分を強くするか、弱くするか?」

「生きていると、いろいろ重要なことがある。結婚とか、就職とか。。。そして、別れたりと悲惨なこと(Disaster) も起きる。」

「多くの人は、Disasterを悪い方にとる。再度起こしたくないと避けようとして、パラノイア(被害妄想)に陥ったりする。」

「問題を否定して、学習しないことが、自分を弱くする。そして、悪いスパイラルに入る。」

どうやって自分を強くするか。。それは、
  1. 痛みというのは、もっとも有効な教師だと考える 「Pain is the most effective teacher!」
  2. まだ生きているじゃないか。まだOKだ。次は上手くやろうと考える。そして、自信がモチベーションにかわる。
    「I'm still alive. I'm still OK. Confidence become motivation.」
そして、Prof. Johnが自分の身に起きたことを語った。

Johnが8歳の時に、父親が脳腫瘍で亡くなった。Johnの母は、名の知れた一流の女子大をでていたが、結婚してからずっと専業主婦だった。だが、母は、父の死で大学院に戻り、博士号をとって大学教授になった。

専業主婦なので、ある種気楽だったし、飛行機も乗ったこともないし、それまでは、どうやって生活費を節約するかを考えるのが習慣だった。
母は、「全員が、これからは、もっと責任をもって、自分でできることをやらないといけない。」ことを示した。Johnも強くなれて、出来ることは自分でやった。

そして、授業を受ける学生に、「これまで悲惨なことに会った人は手をあげてくれ。」
 -- 会場の20% が手をあげた。

「悪いことがあったら、プラスの経験に変えることが大事だ。そういう時に、こう自分に
問いかけてほしい。
             Do Your Disasters Make You Stronger or Weaker?」 (拍手)

6/5(水) - 今学期の最終の授業
   Can You Choose Your Personality?

訳すと、「自分の性格は選ぶことができるのか?」

最後のスライドはまとめになっていた。

「性格は変えられないという意見が多い。」
「でも、若いときの見聞きで決まると思っている。高校の終わりごろまでは、ほかのいろいろなコトで忙しく、性格も固まっていない。」

「高校を卒業して、大学時代のほんの短い時間 "really shot window"で性格が決まってしまう。」

「君たちも、もはや性格を変えるのには手遅れかも知れない(笑) ...」
「 でも、まだかわれる。素晴らしい位置にいるんだ。変わりたければ、なるべく早く。」

「私みたいな歳になっても、コントロールは可能だけれど。。」

「でも、Amazon.comで、筋肉増強トレーニングのDVDを買って、なりたい自分を作ろう。。などというものではない。(酔っ払っていて、なれたと感じることも良くあるだろうけれど。。(笑)」

「やり方は、回りをみまわして、真似るとか、反面教師にすることだ。あの人みたいになりたい。と思えば、少しは変われる。」

ここで、例をあげた。
「(Prof. Johnが)大学院のときに、不公平ばかりする教授がいた。その教授に、疑問点を説明にいって、説明しても理由も無く拒絶する。だんだん、その教授に対してinsult (横柄に振る舞う)するようになっていった。

ところが、その教授は、どんなに横柄に振る舞われても全く気にかけない。前と同じように、食事に誘ったり、親しくしてくれる。

どれだけ教授をinsultしても、彼は変わらない。自分が人間的に不完全であるだけだ。。と気づいた。そんな人間にはなりたくないと思い。insultするのはやめた。

insultするというのは、外部に起きている物事では無くて、自分の中におきている、コントロール可能なことなのだ。

今でも、学生達がどんなに毒づいてきても、insultしないようにと思っている。」

 (いままでで、一番盛大な拍手。)

(Prof. Johnの体験談は、理解しにくかったので、retreat (成果報告会)で雑談する機会があったので、内容を再確認してある。)

補足)
「若者のクリエイティヴ・冒険志向の国際比較」http://tmaita77.blogspot.jp/2013/03/blog-post.html という統計がある。元データは、第5回『世界価値観調査』(WVS)。調査年次は2005~08年であり,国によって違う。とのこと。

図を引用する。

また、若者は萎縮させられている? http://tmaita77.blogspot.jp/2013/03/blog-post_4.html 

には、以下のようなグラフがある。点線を挟んで上に伸びるほど、若者の冒険志向が強いということ。日本は他の国に比べて、若者の冒険志向が30歳以上に比べて、高くないということである。

日本の学生達が、創造的だと思えないのも、リスクが取れないのも、これまで述べたような考え方の教育ができてないからなのではなかろうか。。

ただ、「草食系」というのは私は評価している。人の目を気にしたり、評判を気にしないほうが、自由に暮らせる。「草食系」というのは、そういう人も含んでいると思う。


Stanford大学の授業

Visiting Scholarは聴講(Audit) と授業が受講できる。Stanford大のComputer Scienceの講義を受講している。

講義の内容は別途書くが、さすが、世界でも一流のStanford大学だという感じがする。
今回、受講しているのは指導教官であるProf. John OusterhoutのCS142 ( Web Applications ) である。

Prof. Johnの授業は、厳しいと定評があるらしく、今期はでていないが、Operationg systemの授業では、OSのコードのデバッグをするらしい。。

最も見識深いのが、Johnの授業のThe thought for the weekend. である。これらは以下に書いた。

2013年5月6日月曜日: The thought for the weekend - Stanford大CS142より



Computer Science (CS)の授業とは)
http://www-cs.stanford.edu/courses にあるように、授業は、CS xyz (xyzは数字)とよばれ、100の桁が1のものは学部生初級、2のものが学部上級ないしは院初級。というようにランク付けされている。

講義 CS142 (Web Application) の概要)
 Stanford大は、4半期制(Quater)なので、Spring Quater は4月に始まり6月で終わる。5/8頃に中間試験(mid term) がある。授業は、週3回 x 50分。週2回 x 1時間30分、週1回 x 3時間の3種類があり、先生が選んでいる。

今年の春は、12:15分から13:05という、これまたお食事タイムになっているが、400人の定員から漏れる学生がでていて1ヶ月経ったが、教室はいまだにほぼ満席である。

(それにしても、教室は、冷房が効きすぎで、長袖にジャケットでも、やたら寒い。米国人は、Tシャツ一枚に短パン、ビーサンだが。。)

四半期maxで22単位とれるらしく、学生によってはスケジュールがびっしり。試験の時間がとれないので、授業中にアンケートをとって、3日 x 3つのタイムスロットから決めたが、夜の20時から試験というスケジュールになっている。当然、早朝の試験とかもあるだろう。。

で内容や資料は公開されている。

先生も準備)
Prof. John Ousterhoutは、指導教官なので、研究室のランチミーティングで授業の準備の話しが時々出る。この授業に供えて、かれは、講義ノートと内容を見直している。

そして、
  1. 教室には10分前にはきて、黒板が消えているか確認し、PCを起動し、マイクを確認し、講義ノートにざっと目を通す
  2. 講義中も時々講義ノートを確認する。ときどき、間違えて飛ばして、戻ることもある。
  3. The thought for the weekendという、蛇足の話しでも、かなり詳細な授業ノートを書いてきていて、目を通しながら説明をしている。
  4. 毎週金曜の午後にTA(Teaching Assistant)の学生らと、会議室で授業の打ち合わせをしている。
つまり、400人もの前途が期待される学生に授業をするのだから、いい加減ではいけないという、プロ意識なのだろう。。

教育は、次の世代の人を育てるものであり、一番大切な職業である。プロ意識のある教育者が増えれば、それを受け継いだ教育者が育ち国は強くなる。逆になれば、負のスパイラルに陥る。以下にも書いたが、どうも日本の政府は勘違いしているように思えてならない。


とても速い授業の展開)

授業の進みはとんでもなく早い。
http://www.stanford.edu/~ouster/cgi-bin/cs142-spring13/lectures.php にあるように、
  1. 1週目) HTML, CSS - ここで、Project1の課題が出題。
    http://www.stanford.edu/~ouster/cgi-bin/cs142-spring13/projects.php に、内容有り。採点まで全部書かれている。課題2のCSSでtabを作るというのが難問。
  2. 2週目) URLとLink, Ruby - まつもとゆきひろ 氏が作成したRubyは米国でも人気。Prof. Johnも絶賛している。ここで、Project2の課題が出題。最初の問題から、授業で習ったことだけでは、解けない。自分で調べないとダメ。まず、所定のRubyを自分でマシンにインストールしないと話しにならない。。
     (MacへのRubyのインストールで、ちょっとはまった。。)
  3. 3週目) RailsとSQL 。ここで、Project3の課題が出題。Railsもインストールして自分出実験して提出。
  4. 4週目) SQL, Active Record, Cookies, Forms
  5. 5週目) Javascript - Javascriptは、もともとsunでは、Livescriptと呼ばれていたもので、Javaとは完全に別物という説明から入った。変数は型がないし、objectの作り方も全く違う。
  6. その他、Web Security -- Same Originなどによる対策法と攻撃と対策の進化、現状のデータセンターとMemcached、教授が進めているRAMCloudプロジェクトの紹介。
Java, Webは当たり前)
授業中、Prof. Johnは、何度もこう言う。「web pageを作ったり、Javascriptを使うのは、高校生でもできる。そんなことは、トップスクールのStanfordの学生には期待しない。」
「君たちは、(今までのシステムが作られた経緯とそのシステムの長短を理解し)、次の時代のシステムを作れる人間になってほしい。」

日本では、大学ですら、今の最新技術、それも欧米で誰かが開発したものを教えるのではなかろうか。。それでは、次の技術はでてこない。

また、マスコミやエンジニアも今の最新技術すら使いこなせない人が多いので、「Home pageを作れたり、Javascriptが書ける、高校生をスーパ高校生と賞賛する。」もちろん、励ますのは悪くないが、そこから先が重要なことを、次の世代の学生たちに伝えるのは誰がやるのだろうか。。

授業の姿)
授業では、言語の詳細を教えるのではない。私が理解するに、それは、大学生なら本を買うなり、webを引けば自習できるから。HTMLについては、引用すべきURLや文献がwebに乗っている。それができないレベルの学生はStanfordには、そぐわないということだろう。

授業で教えるのは、以下のポイントである。
  1. 技術発展の歴史
  2. なぜ、その技術が必要になったか。例えば、RubyとかRails
  3. それらの長所と課題
つまり、教科書やwebでは、なかなか得られない知識に絞って教える。
まさに、以下に書いた内容の実践である。

2013年2月5日火曜日: 米国の理科教育


そして、それらは、スライドではなく、黒板に板書していく。

ひとしきり説明すると、質問をとるが、大体数件は会場から質問がでる。一日の授業で30件は出る。先生も答えられないようなものもでる。

また、会場にはMr. Javascriptと呼ばれる学生もいて、先生も時々彼に答えを教えてもらう。経験者や一度会社に勤めてから戻る学生もいるので、レベルはまちまちである。

その後、PCの画面を使って,実際に実験してみせる。学生たちも、Mac(PCはあまりいない。Prof. JohnはPCだが。。)を持っているので、その場で実験ができる。

まとめると、
  1. 概要は、webに、シラバス(授業の進め方)、スライド、説明文書、project(課題)が掲載されている。課題には必要なツールを自分のPC/Macにインストールするやりかたがでている。
  2. 板書(歴史、必要性、言語の得失)
  3. 先生のPCで実験する画面をスクリーンに映す
  4. 質疑
  5. いくつかこれを繰り返し
  6. Administrative talk (業務報告)
  7. また、1-5の繰り返し
の具合である。授業の中間で、中間試験の日程とか課題の締め切りとかに関する事務報告をやる。


こうやって毎度板書していく

CS142の教室の風景
CSSとHTMLの関係をソースをいじりながら実践してみせている様子。
学生から質問がでると、実際にやって試してくれるので分かりやすい。


日本との違い)
手取り足取りは教えない。教科書やwebでは分からないところを教え、質疑をするのが授業。課題をやるには、内容が足らないので自分で調べないとダメ。

とはいっても、結構、初歩的な質問がでるが学生も物怖じすることもないし、先生も丁寧に答えている。つまり、知識ではなく学ぶやり方を教えている。

それを大学で教えられるか、やはり知識を教えるに留まるか。。
日本は、高校までは教育レベルが高いというが、大学であっという間に米国に抜かれるという。この差が、こういうところにあるのではなかろうか。。

日本の大学の先生は、海外の大学への留学経験があるはずであり、分かっているはずである。文科省の役人が分かっていないのか、今の米国が昔とは変わってしまっているのか、昔の留学のことは忘れてしまったのか。。

学ぶ方法を教える)
学ぶ方法を教えるのが教師である。学ぶ方法さえ分かってしまえば、あとは独学で良い。特に最近はInternetもあり先進国には書籍も沢山ある。

CS142では)
静的HTML → CSS → CGI → 第一世代Dynamic web → 第二世代Dynamic webという流れとそれぞれの長短。その解決の歴史を教えた。

Rubyの時にも、Rubyの良さとして、1) 全てがobject, 2) メタプログラミング 3) blockとiterator を最初に説明し、その価値の説明に時間を割いた。

その結果、dynamic webとしてjavascriptとその利点(極めてシンプルであること) と課題(デフォルトで変数がglobal変数というのが一番の課題) を説明したときには、なぜ、javascriptなのかという質問が会場からでてきた。これは、現在、多くのブラウザがサポートしているのはjavascriptしかないので、というのが一番分かりやすい答え。。

日本だと)
日本だと、知識=結果を教える教育になる。この結果なのか、「流行っているから」とか、「みんなが良いといっているから」という価値判断軸だけで行動する人間が増えているように思う。

当然、評価が定まっていない新しいものに対して、良いのか悪いのか判断できず、判断できる人がいる諸外国の後塵を拝することになる。。

巷では、村上春樹の小説が流行ったり、一頃前には、フェルメールの真珠の首飾りの少女の展示に観客が殺到したり。。一般人なら流行に乗るのも分かるが、知識人といわれる人でも、そういうミーハーな動きをしている。
音楽の趣味もそうであって、「なぜ、その曲がよいのでしょう?」「なぜ、その演奏家が上手いのでしょう?」「どういう音が良い音なのですか?」と聞いても、説明が返ってこないことが多い。たぶん、「良いと言われているから」が答えなのかも。。

それでは、自分で新しいものは生み出せない。屁理屈でもいいので、自分が納得のいく、説明を付ける習慣が必要なのでは。。

欧米だと)
また、欧米で、「どうして好きなの?」と聞かれたときに、「流行っているから」「とか、評判がいいから」などと答えていたら、知識人としては、相手にしてもらえない。自分の判断基準をもっていないからである。
「xx氏が、良いと言っているから」などと、答えれば、「xx氏の意見じゃない、君の意見を聞いているんだ。」と返ってきて、聞きかじったxx氏の評論を語ったりすれば、突っ込みが入って答えが返せなくなる恐れもある。。

判断をするためには、知識が必要である。いわゆる、リテラシと呼ばれる教育である。が、それは、困難な状況・新しい状況を判断して対処する技術を獲得するための部品にすぎない。部品だけを獲得して終わりにしてしまっては、高等教育としては不十分に思う。

若者達への期待)
年寄り達はもはや変われないので、若い人たちが変わっていくことに期待している。そのためには、柔軟な理解力がある若いうちにどんどん世界にでて、井の中の蛙の日本とは違った世界があることを体験してもらいたい。。

年寄りが海外にでても、もはや固定概念の小さな穴からしか見られないことが多いようで、本質的に理解したような感想は、あまり聞くことはない。。

中間試験)
5/3日の授業で、Administrative で、中間試験(mid term)の説明をした。
  1. ノートでも印刷でも、2枚まで持ち込み可能。ただし、肉眼で読める文字の大きさであること。
  2. 授業と課題をこなしていれば、暗記は不要な内容
  3. 出題の範囲は、先週のrailsの後、今週のFormsの前まで
  4. もしも、習ってない内容がでたら、会場にいるTA(Teaching assistant)に質問すればよい
その後質問がでて、そこで、前の席の白人の学生が、手を上げて質問するかと思いきや、
「I will announce today is Megan's birthday!!」 とのこと。

Prof. Johnは黒板にMegan という文字と、そこへ矢印を書いて、みんなで、Happy birthday to youの合唱。400人の教室である。。
ふざけているといえば、それまでだが、合唱が終わると直ぐに授業に戻る。ま、学部生なので、一番最初の授業の開始のときは、しばらくざわざわしていることもあるが。。

Databaseの大御所、Prof. Hector http://stanford.io/TdHDFd も、授業の途中にJoke timeというのをもうけているらしい。彼の授業は1時間半 x 週2回であり、学生から集中力を高めるために、途中で息抜きをしたらどうか、といわれて導入したらしい。
Hector曰く、「後から学生に会ったとき、学生が覚えているのは、このJokeばかりだけれどね。。また、ポリティカリーに問題のないジョークをいうのは結構難しくて、あとから、あれで良かったかな。。と考えることもあるんだよ。。」とのこと。。Hectorのジョークはいつも大変面白い。。

課題)
課題をいくつか掲載して、回答例を添付しておく。

1. HTML, CSS

2. Ruby

3. Rails